「あなたが一番好きなことを何でもよいから教えてください」
マッキンゼーの採用面接で受けた質問です。ケース問題が終わり、パーソナリティパートに移った最初の質問でした。学生時代に頑張ったこと等の定番質問を予想していた私は少し驚き、「ウルトラマンを見ることです」と、仕事とは全く関係ない趣味を正直に答えました。すると、面接官は「面白いね!詳しく教えてください。好きな怪獣は?それはなぜ?」と深掘りしてくれ、20分ひたすらウルトラマンの話をしました。 コンサルティングというと、常に論理的に物事を捉え分析する仕事、というイメージを持っていた私には新鮮でしたが、今振り返るとコンサルタントにとってパーソナリティはとても重要です。
「これ、本当にうまくいくんでしょうか…」
ある企業変革プロジェクトにて、施策を一緒に進めていたクライアントの中心人物Aさんから聞かれたことがあります。全国の店舗の働き方ルールを統一して顧客サービスを改善しよう、という施策で、Aさんと私で半年かけてテストを繰り返し、全国展開をスタートした直後のことでした。長年慣れた働き方を変えるのは、現場の方にとってはそう簡単にできることではありません。地道に店長を説得したり、説明会を何度も開いたりする中で、弱音が出てきたのでした。私はすぐに全国展開における課題とその対応策を論理的に考えましたが、Aさんはまだ不安そうです。そこで私は自分の正直な想いをぶつけました。「お客様により良いサービスを提供したいという想いは、全員同じです。ここまで施策を進められたAさんなら、絶対にうまくいきます、一緒に頑張りましょう!」私の発言の効果もあってか、それからAさんは腹を据え、社長も巻き込んであの手この手で全国展開を成し遂げていきました。
経営は論理だけでは成立しない、それは他のプロジェクトでも度々実感することです。そして、経営層の抱える課題を解決し前に進めるコンサルティングという仕事も、論理だけでは成立しません。でも、そこが面白いところだと私は思います。相手に共感し感情をぶつけるからこそ、コンサルタント一人ひとりの個性が出て、クライアントと唯一無二の関係性が構築されます。
だからこそ、採用面接でも私の個性について深掘りをしたのだと思います。そしてマッキンゼーの特徴は、そういった社員一人ひとりの個性や興味、強みを重視しさらに伸ばす文化にあります。その1つが1on1文化です。プロジェクトの内外でリーダーシップと1対1で話す時間を取り、お互いにフィードバックをし合います。そしてフィードバックは、「良い点・強みをさらにどう伸ばすか」に主眼がおかれます。
上記の企業変革プロジェクトでは、私は当初クライアントと信頼関係を築けるか自信がありませんでした。しかし、マネージャーとの1on1で「Yukiさんはクライアントコミュニケーションが強みだと思うよ。その場で課題を整理して前に進められる。さらに伸ばすためには、クライアントに毎回同意するのではなく、Noというべき時ははっきりと言うことも重要だよ」と言われ、それが実際に想いをぶつける、という行為に結びつきました。
論理性と個性の合わせ技でクライアントと関係性を築き課題を解決するコンサルティング、そしてその個性や強みを伸ばすマッキンゼーの社風はとても特徴的で面白いと思います。これから就職を考える皆さんに、是非1つの可能性として検討いただけると幸いです。