本対談では、海外で長く学んだ後に、現在、東京・関西オフィスで活躍中の森川馨太、高井利佳、平﨑詩乃、山﨑寧々が、入社動機や実際に勤務する中での気づきなどを語り合った。
マッキンゼーに勤務してみて、皆さんが学生時代に持っていた目標を実現できていると感じていますか
森川: 学生の頃から小さなビジネスをやっていましたが、社会の仕組みについての理解の解像度が圧倒的に足りないという実感が強く、「早く社会に出て働きたい」という気持ちは人一倍強かったと思います。その点、俯瞰的な視点を持ちながら詳細な課題について細かく考えるマッキンゼーは、この上ない環境でした。また、なぜ日本での就職なのかという点については悩みました。私は中学までは日本、高校がアメリカとフランス、大学はカナダだったのですが、最終的にはマッキンゼー日本支社のカルチャーが自分にとって最も魅力的だと感じ、入社を決めました。ここには、自分が成し遂げたいことを追い求めながら働いている、向上心があって未来志向な人が集まっているなという印象を持ちました。入社後に気づいたことは、型にはまらない面白い人と仕事をする機会の多さです。日本ではコンサル業界はまだまだ成長途上であり、マッキンゼーに集まってくるのは「何か面白いことをやってやろう、そのために修行しよう」という意気込みを持つ人が多いように感じます。
平﨑: 私は小さい頃からイギリスで育ち、そのまま現地の事業会社に就職して、事業戦略構築や営業改善など、貴重な経験をさせていただきました。そんななか、日本での勤務経験があるCEOと話す機会があり、「私は日本企業の丁寧なものづくりや技術、影の努力を良しとする国民性などについて知っている。しかし、今後グローバルで実績を伸ばしていくためには、多様な文化への配慮やグローバルな場でのアピールの仕方など、日本には足りない要素が多いように思える。逆に言えば、日本企業がそのようなアプローチを根本的に変えることができれば、再び成長軌道に乗ることは十分にできると思っている」という話をされ、驚いたと同時に、日本人である私が持っていなかった視点をそのCEOから提供されたことを悔しく思いました。私はこの経験を通じて、CEOが言うところの「日本の第2のルネサンス期」を自分の目で見たい、またそのためにはしっかりと日本の企業文化を理解したいと考えるようになりました。
しかし、20年近くイギリスに暮らしていたため、帰国早々日本の企業文化にどっぷり浸かって働くことはイメージしづらかったですし、勇気もありませんでした。その点、マッキンゼー日本支社は、日本企業と密に働くことができる一方で海外企業とも仕事ができるという、適度なバランスが魅力的だと感じました。実際、海外案件に参加したり、1~2年間海外支社に転籍したりする制度が整備されているのですが、親しい先輩は入社4年目にシアトルのプロジェクトに入り、興味のあるトピックを見つけただけでなく、街が大好きになってしまい、最終的にシアトル支社に転籍してしまいました。個人のキャリアや嗜好を国境を超えて叶えられる環境がいいなと思っています。
入社前に抱いていたイメージと入社後に実際に感じたこととの間にはどのようなギャップがありますか
高井: 関われる仕事内容の幅や深さは想像以上でした。私は、就職活動をする時点では長期的にどこでどのような仕事をしたいのか決めることができませんでした。ですので、将来世界のどこでどのようなキャリアを築くにしても、多くの会社の多様な課題に深く従事できるマッキンゼーでの経験は有益だと思いました。入社後分かったことですが、私が関わったクライアントの多くは、デジタル化、グローバル化、組織変革などの大きな転換の最中にあり、そのような大きな流れを加速するお手伝いができることにやりがいを感じていますし、本当に多様な経験ができています。
森川: 多様性に富んでいることです。これまでの2年間で、スタートアップ創業者、研究者、医師、投資銀行家、官僚などの経歴を持つ仲間と働きましたし、デジタルやデザインの専門チームもおり、このような多様なチームで働くことで多くを学ぶことができます。加えて、イベントや先輩の紹介を通じ、会社を卒業した先輩方との繋がりが多くあることも驚きの一つでした。自分の興味分野で活躍する方々とネットワークを持つことができるのは本当にありがたいです。
また、ダイバーシティ&インクルージョンに関する社内活動に参加しているのですが、「Working Parent Support」「HeForShe」(男性社員がいかに女性社員のインクルージョンと昇進キャリアをサポートできるか)といったトピックを年次やポジションを超えて侃々諤々の議論をしながら進めています。こういった重要な社会課題について全社を挙げて取り組み、かつ誰でも参加できる環境であることは驚きでしたし、マッキンゼーで働く醍醐味の一つです。
山﨑: 私が最も驚いたのは、誰もがお互いの成長を心から重要視しており、そのために思い切って仕事をタスク単位ではなく解くべき課題単位で任せる土壌があることです。入社半年で入ったプロジェクトのパートナーに、「このプロジェクトの終わりまでに、あなたがいたからここまで達成できたとクライアントに言ってもらえるところを目指しましょう」とアドバイスをもらい、それ以来、この言葉を座右の銘に仕事に取り組むようになりました。結果、自分の意見を臆せず発信する自信が持て、クライアントに若手としてのみならず、一コンサルタントとして認めていただけました。このような経験を入社1年目にしてできたことは自分のキャリアを考えるうえで大きなマイルストンになりましたし、これからも信頼してくれるチームメンバーと共にコンサルタントとして仕事に励みたいと思うきっかけになりました。
平﨑: 一緒に仕事をしたことがない人でも海外オフィスの人でも、彼らの活動に興味があれば、メッセージを送って「相談する時間を作ってほしい」とお願いすれば話ができる。マッキンゼーは「Dual Mission」として、クライアントインパクトと人材の成長を等しく重要視しているので、マッキンゼー外のキャリアや人生全般の相談もオープンにできるのだと思います。入社前はギスギスした出世競争のようなものがあるのかと恐れていましたが、実態は全く逆で、長期目線で見たときに一人ひとりがどのような機会を持つべきか、親身にアドバイスをくれる社風は良い意味で期待を裏切られました。
みなさんは、どのような時に海外経験が仕事に活かされていると実感しますか?
森川: マッキンゼーでは若手であっても、多様なステークホルダーを巻き込み、成果を出すことが求められます。私も入社3か月目にはクライアントに一人で行き議論を進めていましたし、入社1年目の先輩が大きな会議で議論をリードしていて非常に刺激を受けました。入社1年目であろうとクライアントや社内において様々な方々の協力を取り付けることが求められるため、常に「自分はどう考えるのか」という視点を持ち、相手の地位に関わらず自分の考えを伝えることが不可欠です。これは、「阿吽の呼吸」が全く通じない様々なバックグラウンドを持つ人々と常に議論を交わしていた海外時代に身についたのだと思います。
またこの仕事においては、人の意見を引き出すスキルが不可欠なのですが、解こうとしている課題によって、社内外のどの国のどの専門家に意見を求めるべきかが大きく異なるということがポイントになってきます。世界中の様々な専門家と瞬時に課題の文脈を共有し、何をどのように解きたいのかという「ツボ」を伝える能力があってこそ、効率的に本質を突いたインプットを集めることができます。その意味で、多様性に富み、様々な課題の文脈が常に交錯するカナダで大学時代を過ごした経験が大きな財産になっていると感じています。
高井: 自分なりの意見を、自信を持ってアウトプットにつなげることができるスキルはマッキンゼーでは不可欠ですよね。トピックが何であれ、ファクトや知識、経験に基づいて意見を持ち、それを論理的に言語化することが求められている点は一貫していると思います。香港での学生時代に常に自分の視点・意見を持ち発信することが求められてきた経験は、マネジャーが決めた仕事を淡々とこなすのではなく、個々人が強い責任を持ち創意工夫してインパクトを最大化していくマッキンゼーのカルチャーのもとで働くうえで、とても有益であったなと感じています。また、海外での教育が染み付いているためか、日本では当たり前とされている価値観や考え方とは異なる視点を提供できていると感じる場合も少なくなく、やりがいを感じる瞬間でもあります。
今後の目標や深めていきたい分野などがあれば教えてください
高井: 私は当初から環境問題に興味を持っていたのですが、最初は正直、環境問題のどの部分にどの立ち位置から貢献したいのか、具体的にはイメージできていなかったところがありました。マッキンゼーでは、年に3~6件程度の全く異なるプロジェクトに関わることができるうえ、多様なプロジェクトや課外活動が存在しているので、その時々の興味に合わせて関わる業界や仕事内容を変えることができます。つまり、比較的高頻度でキャリアの方向性を調整できるということですね。これまで多様なプロジェクトや課外活動に関わることができたことで具体的なキャリアパスが少しずつ見えてきており、環境の分野に貢献するために大きく前進できたと感じています。
山﨑: 環境問題や社会問題に積極的に関わっていきたいです。大学・大学院時代は特にサステナビリティに関心があり、アカデミアに残ることを考えていました。しかし、研究所で飲み水の浄化方法の研究をした際に、新技術を社会に広めることの難しさを身にしみて感じ、技術開発以外の側面でも活動・勉強したいと決意したことで急遽マッキンゼーへの就職を決めました。当初は研究職でなければ最前線の活動はできないのではないかという不安を払拭できずにいましたが、実際にマッキンゼーに入社してみて、社内で自分が関わりたい活動や将来の夢を語り続けていると、世界中の先端事例を扱う面白いプロジェクトや研究グループを紹介してもらえたり、社内外の専門家から学ぶ機会を頂けたりするということに気づきました。発信し続けることで世界のどこかにいるその分野の第一人者や責任者に出会え、興味分野に関わる機会が得られる、これがマッキンゼーに決めて正しかったと胸を張って言える理由です。直近は、このような人と人との結びつきを最大限に活かして、技術とビジネス両方の視点が求められるスマートシティの分野にさらに深く携わっていきたいです。
コンサルタント紹介
高井 利佳 (アソシエイト): 関西オフィス所属。香港科技大学にて学士号取得(Biochemistry and Environmental Science)。主に製造業・消費財のクライアントのオペレーション強化・企業変革に従事
森川 馨太 (アソシエイト): 東京オフィス所属。トロント大学にて学士号取得(Economics/Statistics/Politics)。主に製造業・ハイテク産業のクライアントの戦略立案、特に技術を基軸とした新規事業立案に従事
平﨑 詩乃 (アソシエイト): 東京オフィス所属。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスにて学士号取得(Economics/Environmental Policy)。多様な産業のオペレーション強化・企業変革に従事。新卒の採用と育成活動にも関与
山﨑 寧々 (ビジネスアナリスト): 東京オフィス所属。ケンブリッジ大学にて学士号・修士号取得(Chemical Engineering)。主に製造業・ハイテク産業の案件に従事。製品開発研究グループのコアメンバーでもある